まず耳管とは・・・
解剖

中耳と鼻の奥をむすぶ管で上咽頭という鼻の奥に開口しております。左右それぞれ1本の管となっております。中耳側は骨部、鼻側は軟骨部と分類されます。中耳側の入口を鼓室耳管口、上咽頭側の入口を耳管咽頭口と呼びます。
主な機能
換気(大気と中耳の圧の調節)、排出(中耳腔の分泌物や貯留液を上咽頭に)、病原体からの防御(中耳炎などにならないように)といった機能をもっており、耳疾患に大きな影響を及ぼす臓器です。通常耳管は閉鎖しておりますが、あくびや嚥下時の短時間のみ開きます。
歴史
耳管は、16世紀のイタリアの偉大な解剖学者Bartlomeo Eustachi(Latin name:Eustachius)によって見いだされたそうです。よって英語ではEustachian tubeと言われております。ちなみにEustachiは鼓膜張筋やアブミ骨筋、副腎についても初めてのべたようです。(Adrenal gland)
耳管開放症(Patulous Eustachian tube)
耳管開放症はその耳管が、通常よりも長時間にわたり開放することで、以下のような不快な症状を呈します。
耳管開放症の代表的な症状
自声強聴(自分の声が響く、自分の声が大きく聞こえる。)、耳閉感(耳がこもる感じ、膜がはっている感じ)、自己呼吸音聴取(自分の呼吸する音が聞こえる)、臥位や前屈位(下頭位)での症状の改善(重症例だと改善がない場合もあります。)、立ち仕事や運動、脱水で症状が増悪する。
耳管開放症の原因
体重減少、妊娠、ピル内服、透析、妊娠、中耳炎など様々ですが原因不明であることも多いです。
耳管開放症の診断
詳細な問診、ゴム管(オトスコープ)を耳に入れて発声、鼓膜の動揺や咽頭所見の観察、聴力検査、耳管機能検査や画像検査(CTなど)の結果を踏まえて総合的に評価します。

現在、日本耳科学会より「耳管開放症診断基準案2016」というものがだされております。当院ではこの診断基準案に沿って確実例か疑い例などを診断しております。診断基準案の内容は以下に要約します。
- 自覚症状:自声強聴、耳閉感、呼吸音聴取の一つ以上ある。
- 耳管閉塞処置:臥位もしくは前屈位で症状が改善する。もしくは綿棒やジェルで鼻から耳管をふさくと症状が改善する。
- A-Cの開放耳管の他覚的な所見が一つ以上ある
- 鼓膜の呼吸性動揺あり
- TTAG法で開放所見あり
- 音響法にて開放所見あり
以上の1,2,3の項目ですべてそろうものを確実例、1はあって他の2か3が当てははまるが疑い例としてあります。(当院では耳管機能検査はTTAG法と音響法の両方ができます。音響法で陰性例となってもTTAG法で陽性例もよく見られます。)
さらに耳管開放症は寝て行うCTでは描出されにくいですが、座位CTでは開放耳管がとられられ1、2)、音響法とその開放面積は相関する3)との報告があります。つまり耳管開放症の画像所見として一般的な横になって行うCTでは描出されません。当院では座位CTが受けられます。診断はなかなか難しいことが多いです。要因として症状が常に出ているとは限らないからです。よって何回か検査や診察をうけ、耳管開放症の診断になる方も実際は多いです。
耳管開放症の治療
重症度に応じて、生活指導や点鼻療法、漢方療法、耳管処置、手術療法を選択します。一般的にはまず生活指導、点鼻薬、漢方薬を試し、効果が不十分な場合にその他の治療へ進みます。
生活指導
やせの改善・予防、水分補給、スカーフ療法(スカーフを首に巻く)など、運動後には適切な水分補給、マスクをして保温・保湿に務めることも効果がある場合があります。
頸部圧迫(男性ならネクタイ、女性ならスカーフやハイネックのセーターなど)により耳管周囲にむくみを生じさせると症状が軽減します)。ただし、強く締めすぎには注意が必要です。

鼻すすりの禁止
鼻をすすると症状が改善することがありますが、後に真珠腫性中耳炎や癒着性中耳炎等といった手術が必要な中耳炎に移行することがありますので、鼻すすりはやめましょう。
点鼻療法

症状のある側の鼻から生理食塩水をたらします。心不全や腎不全で塩分制限がある場合を除き、副作用はほとんどないので手軽に行える治療法です。
漢方療法

加味帰脾湯、補中益気湯、白虎加人参湯、八味丸などを食前に内服します。
耳管処置
鼻から金属の管を通し、空気や薬液、医療用ゼリーなどを耳管に直接注入します。薬液や医療用ゼリーの注入は診断のために行うこともあります。効果は人それぞれですが、1日~10日の効果が持続することがあります。
鼓膜換気チューブ留置術

滲出性中耳炎などに行う鼓膜換気チューブは鼻すすりをしても鼓膜がへこまなくなり真珠腫性中耳炎への進行を妨げたり、耳の圧迫感軽減になります。留置直後は鼻すすりができなくなるなどで、一時的な耳閉感の増悪をみることがありますが、長期的には良好です。
耳管ピン挿入術
上記の保存的治療療法を行っても症状が改善せず、かつ診断時に重症例の耳管開放症の場合に選択します。
令和3年3月より、当院で保険適応になりました。
緑色の耳管ピンが透けてみえております。
耳管ピン
参考文献
- Yoshida Hら:ANL 2003;30:135-40.
- Kikuchi Tら:Otol Neurotol. 2007;28:199-203.
- Ikeda Rら:Otol Neurotol. 2016;37:908-13.
- 平井良治、大島猛史:【耳鼻咽喉科疾患に対する生活指導・予防・セルフケア】耳管開放症 JOHNS. 2017;33:1011-1013.
- 医院名
- 医療法人社団 良生堂 末広町ヒライ耳鼻咽喉科
- 診療案内
- 耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科・アレルギー科
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アソルティ末広町1階 - TEL
- 03-3836-3387
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